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AnyMind Group「OB・OGキャリアインタビュー」

vol.9

AnyMind Group「OB・OGキャリアインタビュー」

 

タイから12拠点の人事スタッフをマネジメント

 

―現在担当されている業務内容について教えてください。
AnyMind Groupは今、世界10市場に12の拠点を持っています。私はタイオフィスに勤務していますが、業務の50%は、各拠点にいる人事スタッフのマネジメントです。残りの50%は、担当者が決まっていない、東南アジア以外の地域の採用活動をしたり、会社全体の仕組みを決めたりしています。

 

―松山さんが普段、どの言語を使って仕事をされているのかが気になります。タイ語は話せるのでしょうか?
実は、タイ語はまったく話せません(笑)。会社の公用語が英語なので、基本的には英語で仕事をしています。タイ語は生活に必要な最低限の単語だけ覚えました。

 

―12拠点にもまたがる人事スタッフのマネジメントは大変そうですね。
リモートで管理するのは、思った以上に難しいなと感じています。物理的な距離があると、やはりメンバーが今、何をしているのかを把握できないこともあるので、できるだけ現地に行って対面でコミュニケーションするように心がけています。特に社歴の浅いメンバーなどは、分からないことがあったときに常に情報にアクセスできるような仕組みを作る必要がありますし、「いつでも何でも聞いていいよ」という関係性も作っておかなければなりません。

 

今、香港に人事部門のシニアマネジャーが一人いるのですが、彼が3カ国を担当してくれています。そうすると、私がダイレクトにマネジメントするメンバーの数は少なくなるので、マネジャーを育てることも重要なミッションです。

 

人事として海外で活躍したかった

 

―これまでの経歴を教えてください。
私はもともと帰国子女で、小学校までアメリカとオーストラリアに住んでいました。大学を卒業後、新卒で東京の大手通信会社に入りまして、海外に住んでいる日本人や外国人を採用するチームに配属になりました。私はそこでインド人のエンジニアを60人くらい採用しました。

 

1年半くらい働いたのですが、その会社が割と個人主義で、一人ひとりが競争しているようなカルチャーだったんです。もう少しきちんとキャリアパスを描けるような会社で働きたいと考え、ITベンチャーに人事として転職しました。そこでたまたまベトナムに赴任が決まり、バングラデシュやカンボジアなど、4カ国くらいの採用を担当しました。

 

―そこでは何年くらい勤めたのでしょうか?
1年くらいですね。その会社もメンバーも大好きだったのですが、ちょっとずつ自分のキャリアパスとズレが生まれてしまったんです。もう少し自分の知らない国の採用に携わってみたいと思っていましたし、自分のできる人事業務の幅を広げたいと思うようになりました。

 

例えば、評価システムなどにHRテックを取り入れたり、自社のキープレイヤーはどういう性格の人なのかを分析して、それを採用に生かしたりするような領域にチャレンジしてみたかったんです。でも、とにかく目の前にやらなきゃいけない仕事が山積みで、この会社で自分のやりたい領域にいくのはかなり先だな……と思ったので、転職を決めました。
そのとき、日本に帰ろうかとも思っていたんです。でも、いざあと1カ月で帰る、となったタイミングで、帰りたくないなと思うようになってしまって。それで、3社目に選んだのがAnyMind Groupです。

 

―決め手は何だったのでしょうか?
場所は大きな要素でしたね。採用の段階で勤務地は決まっていなかったのですが、AnyMind Groupだと、日本だけでなく、いろいろな国で仕事ができることは確実でした。海外で人事として活躍できること、そして、カルチャーにマッチしていたのが決め手です。また、私は2017年1月に入社したのですが、創業から1年経っていないときだったので、まだ人事部がなかったんです。仕組みがすでにできている会社よりも、何もないところから入ったほうが、やりがいがありますし、自分のプランが反映されやすいだろうなと思いました。

 

AnyMind Group「OB・OGキャリアインタビュー」

 

―人事部がまだない中で、入社後、何から始められたのでしょうか?
部署の名前が整っていなかったので、入社1週目に、まずは部署の名前を付けたり統一したりしました。あとは役職を整理して、0から10までのレベルで、自分が今どのレベルにいて、どういうステップで上がっていけるのかを明確にしました。2週目からはシンガポール拠点の採用を始めました。

 

―新卒から一貫して人事の仕事に携わっていますが、他の仕事に興味を惹かれたことはなかったのですか?
そうですね。たぶん、人事が一番合っていると思いますし、人事で良かったなと思います。人事の仕事の一番好きなところは、新卒採用のときに、自分の伝える一言で、悩んでいる学生の、人生における大事な決断の手助けができるところです。

 

1社目の入社研修で、コピー機の販売営業をしたんです。そのときにすごく面白いなと思ったのですが、自分の好きなものを売れたらもっと楽しいだろうなと思ったんです。人事の仕事は「会社を売り込む」、ちょっと営業に近い仕事だと思っています。新しい国に行ったら、そこの人たちに自分の会社を知ってもらうために、PRのプレゼンをすることもあります。自分の好きな会社だから所属しているわけで、それを売り込めるのは楽しい仕事だなと思います。

 

―一方で、大変なこともあると思いますが。
国によって法律も制度も違うので、自分が何を知らないのかすら分からないようなことがあって、それは大変ですね。リーガルチェックは外部の専門家にもお願いしていますし、大きなオフィスには、すでに現地で人事の経験のあるメンバーを採用してチェックをしてもらっています。本当にビックリするような制度や法律があるので、外国の採用に携わると、自分が知っていることがいかにわずかだったのかを思い知らされます。

 

―難しいお仕事ですが、日々、どんなふうに勉強されていますか?
現地の法律や制度などは、ひたすら契約書を読みます。読んでも読んでも、見逃していたり、理解していなかったりして、毎回「これってこういう意味なんだ!」という発見があります。
人事の新しい仕組みや戦略は、アメリカが進んでいるので、アメリカにあるHRテック系の会社のニュースレターを購読したり、無料のウェブセミナーを見たりしています。

 

世界中で価値を発揮できる人事になりたい

 

―日本と海外、両方の採用活動に携わってみて感じる、共通点と相違点を教えてください。
例えば、応募者のキャリアパスを聞いて、どんなカルチャーが好きかを確認し、自社の魅力を伝える。応募者に魅力を感じてもらうためのコミュニケーションは、言語が違うだけで内容は変わらないと思います。

 

違うところはたくさんありますが、例えば、転職に対するスタンスはかなり違いますね。日本は転職活動をしていることをあまり公言しない、クローズドな部分があります。求人媒体などでも、「まずは気軽にお越しください」だったり、「まずはお茶をしましょう」というようなアプローチが多い。
でも、東南アジアなどでは、「お茶なんてしないくていいので、早くジョブディスクリプション(職務記述書)をちょうだい」という感じなんですよ。日本は周りからじわじわ攻めるのに対し、海外は直球でいかないといけない。スピードもかなり違いますね。私はどちらの気持ちも分かります。

 

―この先、関わってみたい国はありますか?
東南アジアを経験できたので、今度は違う地域に携わってみたいですね。今もウクライナやカザフスタン、ロシアなどの採用もしているのですが、まだ行ったことがなく、知らないマーケットなので面白いです。ヨーロッパにも興味があります。

 

―今後の目標を教えてください。
直近の目標としては、いま人事評価システムを作っています。そうすると紐づいてくるのがマネジャーの育成です。今、300人の社員がいて、会社の規模が大きくなったので、仕組み化するフェーズに入ったと思っています。これまでは採用にかなりフォーカスしていたのですが、採用の仕組みは整ってきたので、次のステップに進まなくてはと思っています。

 

また、私はマネジメント業務をしているのですが、まだ経営者の視点ではなく、人事担当の目線だと思っています。中長期の目標として、これからは、会社全体で見たときにどうあるべきかを考えられるようになりたいと思っています。今「HRBP(戦略系人事)」という言葉がよく使われていますが、本当の意味で経営目線を持った、戦略的な仕事ができるようになりたいと思います。そして、東南アジア以外の地域でもバリューを出せる人になりたいですね。
――ありがとうございました。

 

松山さんの2018年5月のある日のスケジュール

 

8:30 起床・ワークプレイスで簡単に状況把握。日本(+2時間の時差)のチームからのコンタクトに対応する
9:30 定時(10時)だけど天気が良かったので早めに公園経由で出社。徒歩で5分ほど。コーヒーショップでコーヒー買う日もあれば屋台でパイナップルを買う日もある。
10:00 HRチームとミーティング、採用状況の把握、難易度の高いポジションのスカウトをサポート
10:30 メールチェック、LinkedInチェック、応募のチェック
11:00 スカイプでロシアのエンジニアと面接
12:00 Monthly Birthday Luncheon: みんなでピザ。Instagramのコーポレートアカウントに様子を投稿
13:30 香港のHRメンバーとウィークリー1on1ミーティング
14:00 リージョナルHRウィークリーミーティング
14:30 社員がお菓子を配り始めるからもらって食べる
15:00 エンジニアの現場マネジャーと採用とブランディングについてのミーティング
15:30 各国の採用進捗のチェック
16:30 経理や総務のメンバーと一緒にバックオフィス業務のフローの改定と策定
17:00 新しく立ち上げるマレーシアオフィスの立ち上げメンバー(人事ポジション)の最終面接
18:00 バンコクオフィスでTGIF(社内の飲み会)1時間
19:00 サクッとジム。オフィスのビルの上に入っているので会社のメンバーみんなでワークアウト
20:00 日本でこの取材を受けるために空港にGrabのコーポレートアカウントで移動

 

AnyMind Group
松山栞

 
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